コバヤシ ミノル   Minoru Kobayashi
  小林 実
   所属   十文字学園女子大学  教育人文学部 文芸文化学科
   職種   教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2005/10
形態種別 研究論文
標題 空想と現実の接点―大津事件に先立つ西郷隆盛生存伝説―
執筆形態 単著
掲載誌名 『日本近代文学』
掲載区分国内
巻・号・頁 第73集,16-32頁
概要 明治二十四年(一八九一)、ロシア皇太子来日に先立って全国に広まった、西郷隆盛生還の風説は、ロシアという巨大な「外部」の脅威が、西郷という偉大な「朝敵」の記憶と結びついたもので、このとき西南戦争ばかりでなく、戊辰戦争の記憶も呼び起こされた。しかし、かつて西南戦争で軍功をあげた津田三蔵が、この風説を信じて、自身のアイデンティティの危機を感じ、ロシア皇太子を襲ったことで(大津事件)、にわかに新たな危機が現実化し、戊辰や西南戦争の記憶は現実的な切迫感を失ってしまう。つまり、風説を構成する人々の空想が、現実との接点を境に、事実へと反転することで、人々の過去の記憶が一瞬にして清算されてしまったのであり、またその転換の接点となったのが、風説という物語の場であったのである。