タキシマ マサコ   Masako Takishima
  滝島 雅子
   所属   十文字学園女子大学  教育人文学部 文芸文化学科
   職種   教授
発表年月日 2019
発表テーマ 待遇コミュニケーションにおける美化語の表現・理解意識:テレビの中の美化語の分析から
会議名 待遇コミュニケーション研究
主催者 待遇コミュニケーション学会
発表形式 その他
開催期間 2019~2019
発表者・共同発表者 滝島 雅子
概要 <p>敬語接頭辞の「お」「ご」が付いた名詞に関して、日本語教育ではこれまで、尊敬語や謙譲語を中心に学習が行われ、美化語については積極的な学びが行われてこなかった。このため、日本語学習者の発話において、違和感につながる誤用がしばしば指摘される現状がある。本研究は、実際のコミュニケーションの1つのケーススタディーとして、テレビの情報番組で使われる美化語に注目し、それぞれの場面で美化語がどのような意識で使われ受け止められるのか、コミュニケーション主体(表現主体および理解主体)のインタビューを通して分析することで、日本語のコミュニケーションにおける美化語の様相を明らかにし、学習者の学びにつなげていくことを目的とする。</p><p>調査は3段階で行った。まず、番組を一定量視聴し、放送の中で使われている美化語を抽出した。次に、その中のいくつかのシーンの美化語を対象に、表現主体の意識に関して番組担当アナウンサー7名に半構造化インタビューを実施した。そして、同様のシーンの美化語を対象に、美化語を受け止める側の理解主体の意識に関して、番組の視聴者(首都圏在住の20代~60代の男女36名)にグループインタビューを行った。調査の結果、美化語の主な意識には、表現主体がその場面(人間関係や場)をどのように捉えるかという意識(本稿では「待遇意識」と呼ぶ)と、物事をきれいに表現したり自分の品格を保持したりする意識(本稿では「美化意識」と呼ぶ)があることが明らかになった。一方、理解主体側も、美化語を通して「待遇意識」や「美化意識」を受け取っており、特に「美化意識」は、表現主体の性別と強く結びつき美化語の印象を左右していることが明らかになった。また表現主体は「美化意識」より「待遇意識」から美化語を使用し、理解主体は美化語を通して「待遇意識」よりも「美化意識」を受け止める傾向があることも明らかになった。</p><p>これまで、「ものごとを、美化して述べるもの」(「敬語の指針」文化庁2007)と説明されてきた美化語を、「誰が誰に対して、何を、どんな場面で伝えるのか、あるいは、受け止めるのか」という待遇コミュニケーションの観点から観察することによって、表現主体・理解主体双方の多様な使い方・受け止め方が明らかになった。今後は、こうした多様な美化語のありようを踏まえた上で、日本語学習者が自己表現として主体的に美化語を使えるようにするための具体的な学習プランを考えていくことが課題である。</p>