イノウエ ヨシタカ   Yoshitaka Inoue
  井上 嘉孝
   所属   京都文教大学  臨床心理学部 臨床心理学科
   京都文教大学  大学院臨床心理学研究科 博士前期課程
   京都文教大学  大学院臨床心理学研究科 博士後期課程
   職種   准教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2024/03
形態種別 研究論文(大学,研究機関等紀要)
査読 査読あり
標題 『ゲゲゲの鬼太郎』の深層心理学1~初期作品『墓場鬼太郎』と『鬼太郎夜話』のイメージを内在的に読み解く~
執筆形態 単著
掲載誌名 京都文教大学臨床心理学部研究紀要
掲載区分国内
巻・号・頁 第16集,3-18頁
概要 水木しげる作『ゲゲゲの鬼太郎』は、日本文化の代名詞として世界的に知られた妖怪マンガであり、異界あるいは妖怪イメージの歴史的変遷およびその転換点を示している。本研究では半世紀以上に渡る『ゲゲゲの鬼太郎』の膨大な作品群のなかから『墓場鬼太郎』(1960年)と『鬼太郎夜話』(1960-61年)という初期2作品を取り上げ、そのイメージを深層心理学の観点から内在的に読み解き、現代における心性史的な意義を検討した。両作品は夢や神話のように多義的なイメージを「物語」という時系列の形式に落とし込んだイメージの集合体であり、以下のようないくつかのテーマを繰り返し変奏しつつ、展開している:人間と妖怪、この世とあの世、見える世界と見えない世界の接点や関係性。そこに反映された自我と非自我の関係。二つの世界に溶け込む両義的・多義的存在としての妖怪、あるいは妖怪的人間/人間的妖怪。やがて多義的な妖怪イメージが分化して、その豊かで混沌とした生命力は減衰していく。妖怪のイメージは時代の推移や人間との関係においてさまざまに変化するが、他の怪物イメージとも共通する変化のプロセスと構造が認められる。それゆえ異界イメージに関する深層心理学は文化論のみならず、現代意識論として検討される必要がある。また妖怪とは、自我親和的で違和的な、既知で未知のものである「こころ」の現れとして最適なイメージである。鬼太郎のように新しい時代を象徴する妖怪の誕生は、現代意識における自我と非自我との関係を問うイメージと考えられる。