タナカ エリ   Eri Tanaka
  田中 恵理
   所属   熊本保健科学大学  保健科学部 共通教育センター
   熊本保健科学大学  保健科学部 医学検査学科
   職位   准教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2016/06
形態種別 書評論文,書評,文献紹介等
標題 (書 評)
Christopher DeVault. James Joyce’s Love Stories
執筆形態 単著
掲載誌名 Joycean Japan
掲載区分国内
巻・号・頁 (27),132-33頁
総ページ数 137
概要 Joyceの全作品を取り上げ、そこにJoyceの「愛の倫理」が貫かれていると論じているのが、本書である。Martin Buber(1878-1965)の理論(「我-それ」(“I-It”)、「我-汝」(“I-You”)という二つの根源語で分けられる人間関係)を援用し、Joyceが描く登場人物と他者との関係性をこれら根源語に当てはめることにより、相手を自分の尊大さを映し出す鏡として見なすだけの関係(「我-それ」)なのか、もしくは互いに認め合う関係(「我-汝」)なのかを論じている。その際、そこに反映されている愛の形がそれぞれ「自己愛的欲望」と「他者への愛」であることを受け、この二種類の愛の形を著者は、自己愛的欲望の肉欲的な情欲を示す場合は “amatory”、他者性の相互理解を示す場合は“amorous”という単語を用いて表現する。著者の主張は、主に初期作品では“amatory”な理想主義と欲望に陥って他者を拒絶する人物たちが描かれているのに対し、後期作品では他者に対する“amorous”な共感と肯定を見せる人物たちが描かれていると示すことで、作品発表を経るに従い登場人物の他者に対する関係性が発展的に変化しているという点にある。