イトウ シンタロウ   Ito Shintaro
  伊藤 晋太郎
   所属   二松学舎大学  文学部 中国文学科
   二松学舎大学大学院  文学研究科 中国学専攻
   職種   教授
発表年月日 2003/10/05
発表テーマ 関羽と貂蝉
会議名 日本中国学会第五十五回大会
主催者 日本中国学会
学会区分 全国学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 単独
開催地名 筑波大学
概要 『三国志演義』の重要人物である関羽と貂蝉であるが、作中この二人の間には何の関係も生じない。
一方で「関羽が貂蝉を斬る物語」というものが存在する。『三国志演義』に採用されなかったこの物語は、現在、戯曲・弾詞・民間伝説の形で伝わっている。ここでの貂蝉は、貞節のない悪女として描かれている。そして関羽は女色に惑わされることのない正義感の強い英雄として描かれる。しかし『三国志演義』の登場後、義を重んじ愛国心に溢れる女性としての貂蝉像が定着し、それが「関羽が貂蝉を斬る物語」における貂蝉像と齟齬をきたすこととなった。また、義を重んじる関羽がそのような貂蝉を斬ることは、もはや観衆・読者にとって受け入れられるものではない。
そこでこれまでとは異なる展開を見せる関羽と貂蝉の物語が生まれた。新しい物語では、初め貂蝉を悪女とみなしていた関羽がやがて彼女が義に厚いことを知り、最後には貂蝉が登仙したり、あるいは出家したりするという筋立てになっている。
本発表では、これら関羽と貂蝉をめぐる物語の変遷とその背景について論じていきたい。