オオビ ユウコ   OBI Yuko
  大尾 侑子
   所属   東京経済大学  コミュニケーション学部
   職種   准教授
研究期間 2018/04~2021/03
研究課題 近代東アジアにおける「表現の自由」と文化的相互浸透に関するメディア社会学的研究
実施形態
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 科学研究費助成事業 若手研究
研究機関 学習院大学
科研費研究課題番号 18K12941
代表分担区分 研究代表者
研究者・共同研究者 大尾 侑子
概要 当該年度は、戦前昭和に軟派出版物を専門に扱っていた出版組織(「珍書屋」)が、検閲が強化されていく1920年代後期において東アジア圏をいかにまなざし、意味づけていたのかを検討した。具体的には雑誌『文芸市場』『カーマシャストラ』『グロテスク』といった雑誌と、その周辺資料を分析の対象として設定し言説分析を行なった。 これまで戦前日本の「エログロナンセンス」という流行語は、都市中間層の享楽的で奢侈的な文化の一側面を理解するための概念として論じられてきた。しかし、近年の研究から「エログロナンセンス」が東アジア圏に広がりを見せたことや、日本と周辺諸国の文化的な相互浸透性が明らかにされつつある。本研究の意義は、こうした先進的な研究に対して地下出版という側面からその具体的な実践を探り、提示したことにある。とくに個人蒐集家所蔵の資料を提供いただいたことで、資料的な新規性も高い。以上は査読論文として「出版界の「異端児」と東アジア 理想郷としての「上海」」にまとめ、論文集『日本近代における〈国家意識〉形成の諸問題とアジア』(勁草書房)として出版された。以上の研究を通じて、これまでのメディア史研究において固有の領域として検討されることの困難であった「地下出版」という領域を開拓する一助となったと考える。