チバ サトル   Satoru CHIBA
  千葉 諭
   所属   東京医療学院大学  保健医療学部 リハビリテーション学科 基礎教員
   職種   教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2008/11
形態種別 研究論文(学術雑誌)
査読 査読あり
標題 パラフィン包埋組織標本からの接合菌の核酸同定方法の確立
執筆形態 共著
掲載誌名 東京慈恵会医科大学雑誌
掲載区分国内
巻・号・頁 123(6),319頁
著者・共著者 河野 緑, 藤ヶ崎 純子, 保科 定頼, 湯坐 有希, 秋山 政晴, 千葉 諭
概要 背景および目的:接合菌症は一般に白血病や糖尿病などの易感染患者に好発する日和見感染型深在性真菌症の1つであり, 起因菌はムーコル科Mucoraceaeの4属Rhizopus, Rhizomucor, Mucor, Absidiaのいずれかの菌種にほぼ限られている. 確定診断を行うためには病理組織検査および塗沫, 培養検査を行う必要がある. 多くの場合, 診断は病理組織検査のみにより行われていて起因菌種の同定がなされていないのが現状である. 今回我々は, 接合菌症が疑われたパラフィン包埋組織標本からPCR増幅方法によって, 接合菌の菌種の同定を試みたので報告する. 材料および方法:病理組織検査により接合菌症と診断された4例のパラフィン包埋組織標本より, その組織像から真菌の存在が示唆された個所の組織を取り出し, 脱パラフィン後, 核酸の抽出を行い, 真菌特異的プライマーITS1およびITS2を用いて病原真菌の同定に利用されている真菌ITS領域の遺伝子の増幅を行い, 増幅産物の塩基配列を調べ, 既存のデータベースと照合して, 菌種の推定を行った. また, データベースにある各種接合菌のITS領域の配列を基にAbsidea spp., Rhizomucor spp., Rhizopus spp., Mucor spp.を特異的に検出するためのPrimerおよびPCR条件の設定を行い, 迷入真菌との識別を行った. 結果および考察:パラフィン包埋組織標本由来の真菌特異的プライマーITS1/ITS2 PCR増幅の結果からは標本作成時やパラフィンからの真菌のコンタミネーションも検出され, いくつかの塩基長の異なる増幅産物が得られた. あらかじめ予測された塩基長の増幅産物の塩基配列決定を行ったところ. 接合菌症の起因菌種の特定が3例で可能であった. 上記“方法”で示した各接合菌種に特異的なプライマーでの検索では4例(Rhizomucor pusillus 2例, Rhizopus microsporus, Absidia corymbifera)とも塩基配列決定後に起因菌種の特定が可能であった. パラフィン包埋組織標本から菌種の推定同定が可能になることは接合菌症の実態を把握するためにも有意義なことであると考えられる.