スエキ ハジメ
SUEKI Hajime
末木 新 所属 和光大学 現代人間学部 心理教育学科 職種 教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 2018/09 |
形態種別 | MISC |
標題 | ICTを用いた自殺対策の新たな方向性の検討 |
執筆形態 | 指定なし |
掲載誌名 | 自殺総合対策研究 |
巻・号・頁 | 1(1),48-58頁 |
著者・共著者 | 伊藤 次郎,末木 新, 他 |
概要 | 近年、若年層の自殺を防ぐためにオンラインの相談体制を整える動きが活発化し、ICT を用いた自殺予防対策の実施は急務となっている。本研究では、ICT を用いた自殺対策の 1 つとしてインターネット・ゲートキーパーを取り挙げ、2 つの研究を実施した。<br /> 【研究 1】自殺関連用語を利用した検索連動型広告の自殺誘発性を評価し、広告を出稿するためのガイドライン案を作成することを目的とした研究を実施した。「死にたい」「自殺 方法」など 13 の自殺関連用語を用いて全国から検索連動型広告を収集し、52 種類の広告の内容を質的・量的に評価した。その結果、自殺関連用語を検索用語として使用し、危険がないと評価された検索連動型広告は半数以下であった。自動的に検索結果が組み込まれる広告、人の死後に関わる事業の広告、自殺のリスクがある人が来ることを想定していないと思われる事業の広告、相談機関の対象者と広告が表示される都道府県が一致していない広告、そうせざるを得ない事柄について「~しないで」と呼びかけている広告は、閲覧者に悪影響を与えると考えられた。抽出された広告の特徴を基に、相談・支援機関のための自殺関連用語を使った検索連動型広告ガイドライン案を作成した。<br /> 【研究 2】今年度、NPO 法人 OVA が実施したインターネット・ゲートキーパーの相談事例を分析し、オンライン相談の成否に関連する要因を検討することを目的とした研究を行った。2017 年度に行った相談のうち、184 名を対象として分析を行った。相談が継続したのは 85 名であり、相談を継続させるためには初回の返信を 12 時間以内に行った方がよい可能性が示された。また、(A)相談者のポジティブな感情の変化が確認できたこと、(B)相談者が家族や医療機関などに相談できたことを、それぞれ相談の成功と定義したとき、今回の相談継続者 85 名における相談の成功率は 32.9%であった。相談が成功したのは、電話面接や対面相談を実施した相談者に多かった。オンライン相談では、相談者がより現実的な手段で支援者とつながることができるように、信頼して話ができる関係性を築き、周囲への援助希求行動を動機づけていく関わりが重要であると考えられる。この点でオンライン相談は、自殺関連相談の入口としての機能を持たせることが有効であろう。<br /> さらに、以上の 2 つの研究結果に従って、ICT を用いた新たな自殺対策の方向性について提言を行った。 |
ISSN | 2433-6939 |
PermalinkURL | https://jssc.ncnp.go.jp/file/pdf/SPRJ2018_1_2.pdf |